
「遠野・釜石医師会合同チーム」
令和7年9月21日(日)、岩手県医師会 親睦ソフトボール大会でのスナップです。
初戦の県立中央病院チームに惜敗(?)した後に撮影しました。この皆さんの晴れ晴れとした表情をご覧ください。そして違和感のないチーム編成にも感動しています。
来年も楽しみです。
植田医院 植田俊郎
殆どの岩手県沿岸地域がそうであるように、釜石は日本における人口減少問題の最先端の地域です。私が見てきた釜石はたったの17年間でしかありませんが、それでもこの地域の人間が大幅に減っている事を強く感じます。
これは国全体としても同じことで、「このままでは」なんて悠長な段階では無く、「すでに」今の医療制度を維持するのは物理的に不可能となっています。だから、当然色々な歪みが生じているのでしょう。
移民を大量に受け入れてこのままの制度を維持するか、移民を入れないで大幅な医療制度を含む社会保障の方針転換をするか・・・・もはや選択する時期はとっくに過ぎており、そもそも、日本の平均収入が相対的に下がっているので、平均賃金は韓国の方が高く、また、タイやベトナムで働くのと日本で働くのに稼げる額に大きな差が無くなっている(医師の収入はタイのバンコクの病院であれば日本とほぼ同じ)。そもそも、今はオーストラリアやヨーロッパ・アメリカで働いた方が、圧倒的に収入が得られるので、日本で働く魅力はあまり無い状況になっています。OECD加盟国の中で日本だけが圧倒的に移民を受け入れていない唯一の国です。その上で社会保障をどう維持していくのか前例の無い事態に世界が注目しています。今は70歳代の先輩たちが身を削って働いてくれているのでなんとか社会が維持されていますが、10年と経たずに随所で今の「当たり前」が崩壊していくことは、予想ではなく現実です。
日本より先に、第2次大戦後に経済を大幅に縮小させたイギリスの現在の医療情勢は、高熱が出ても医師に診てもらうには最速で「3時間」ではなく「3日」待ちで、低額の救急車は病院の入り口で渋滞してなかなか急患室に入れない状況。骨折をした場合、整形外科医の診察を受けられるまで3週間必要。早く専門医の治療を受けたい人は1回の診察で10万円以上かかる自費での診察を受ける社会です。首都圏の英語対応を売りにした整形外科では、骨折をしてから旅行保険に入って日本に治療を受けにくるイギリス人が多いそうです。アメリカの医療はもっと凄まじく、全てが金次第のシビア医療。
日本はどうでしょう?色々な問題はあるものの、どう見ても圧倒的に世界で一番安く良質な医療が届けられている状態です。日本とアメリカの両方で臨床医をやっている医師に話を聞いたところ、もし自分が病気や怪我をして医療を受けるなら圧倒的に日本でやってもらいたいと言っていました。
そんな素晴らしい状態はもうすぐ終わるのは確実で、この先どのような医療体制になるか見通しは立ちません。
日本経済や社会保障制度に関してだけ見れば、なかなか厳しい現実しかありませんが、医療を行う人間として忘れてはならいことがあります。病気や怪我で困っている人を助ける、寄り添う、一緒に考える。これら医療の持つ根源的な善性は社会や制度がいかに変わろうと絶対に揺るぎのないものです。医療人としての初心。そこさえ忘れなければこのカオスも乗り切れるのではないかと・・・。
悲観的な将来像ばかり予想して、ため息ばかりつくのでは何も生まれません。「我々には揺るぎないものがある。」「それさえあれば何とかなる。」そう楽観的に未来を見る開業5年目の秋の夜です。