
「三陸沿線の鉄路」
令和4年6月9日、東日本大震災後に建設された防潮堤の大槌川水門付近を歩いていたら、列車の走る音が聞こえてきた。持参していたカメラを大槌川に架かる鉄橋に向けたところ、宮古に向かう1両編成の三陸鉄道のディーゼル車をとらえることができた。「あまちゃん」に登場しているデザインの車両であった。
平成23年3月11日の震災でこの鉄橋は下の写真にあるように完全に流失した。さらに各地で寸断されたJR山田線と三陸鉄道の復旧は、三陸沿岸住民の悲願であった。
そして平成31年3月、長い時をかけて三陸鉄道リアス線として復旧が成し遂げられた。しかし令和1年10月の台風19号のため再び不通区間が生じたが、この工事も令和2年3月に完成し現在に至っている。
鉄橋を走る列車は何事もなかったように北に向かって走り去った。
植田医院 植田俊郎
少し長くなります。
昨年、岩手県内で自ら命を絶った人は266人で、人口10万人当たりの自殺した人の数を示す自殺死亡率は22.9人と、全国で最も高くなった。今回、産業医としての立場から主に労働者における、自殺への予防や対策に関して考えたいと思う。
自殺が起きる背景には、うつ病、アルコール依存症、薬物乱用等の心の病が隠れていることが圧倒的に多い。ところが、最期の行動に及ぶ前に精神科に受診していた人がごくわずかというのが現状。怖いのは、心の病に罹ったことではなく、それに気付かずに放置することで、最悪の場合には自殺さえ発生してしまう。
働き盛りの方の自殺を予防するためには、悩みを抱えている人が必死になって発している救いを求める叫びを的確にとらえて、早い段階で治療に結びつけることが重要と考える。
『自殺の危険因子』
① 自殺未遂歴 自殺未遂は最も重要な危険因子
(自殺未遂の状況、方法、意図、周囲からの反応などを検討)
② 精神障害の既往 気分障害(うつ病)、アルコール依存など
③ サポートの不足 未婚、離婚、配偶者との死別、職場での孤立
④ 性別 自殺既遂者:男>女 自殺未遂者:女>男
⑤ 年齢 年齢が高くなるとともに自殺率も上昇
⑥ 喪失体験 経済的損失、地位の失墜、病気や怪我、業績不振、予想外の失敗
⑦ 性格 未熟・依存的、衝動的、極端な完全主義、孤立、反社会的
⑧ 他者の死の影響 精神的に重要な繫がりがあった人が突然不幸な形で死亡
⑨ 事故傾性 事故を防ぐのに必要な措置を不注意にも取らない。慢性疾患への予防や医学的な助言を無視。
⑩ 児童虐待 小児期の心理的・身体的・性的虐待
『自殺予防の十箇条』
次のようなサインを数多く認める場合には、自殺の危険が迫っている。早い段階で専門家に受診させる必要がある。
① うつ病の症状に気を付ける
② 原因不明の身体の不調が長引く
③ 酒量が増す
④ 安全や健康が保てない
⑤ 仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
⑥ 職場や家庭でサポ〜卜が得られない
⑦ 本人にとって価値があるものを失う
⑧ 重症の身体の病気に罹る
⑨ 自殺を口にする
⑩ 自殺未遂に及ぶ
☆日常の配慮と相談対応
職場の中には、日頃から自殺問題を話題にすることに抵抗を感じる人が存在する。また「自殺について話をすると、かえって自殺の可能性高めてしまうのではないか」と危惧する人もいる。確かに自殺という話題は大変繊細な心の問題であるとともに、職域において頻度の低い稀なことであるため、職場では話題とし難いものであると思われる。しかし、人の命は一度限りのものであり、周囲に与える影響は極めて大きいものであることから、従業員に対しては安全衛生講演会などで取り上げる等注意を喚起し、管理者に対しては管理者敎育の中で本人や部下に自殺の可能性が疑われる場合の相談先を明示することが望まれる。また、医務室や人事安全衛生担当部門に自殺予防や「いのちの電話相談」などの資料を用意していくことが、対策の第一歩と思われる。
個別の配慮としては、特別に業務負荷が多い人(残業過剰、責任過剰)、職場や家庭などの困難な問題に直面しでいる人、うつ病や飲酒問題など心の病気に罹患している人については、職場の現場責任者がしばしば声掛けし、体調について聴いておくことが望まれる。また必要であれば、産業保健専門職(産業医、保健師、看護師、カウンセラーなど)や外部の医療機関へ相談に行くように指導する。
『自殺の予兆が見られる人への対応』
① 真剣に話を聴く
② 言葉の真意を聴く
③ できる限りの傾聴をする
④ 話題をそらさない
⑤ キーパーソンとの連携
⑥ 産業保健スタッフへの相談や専門医への受診を促す
⑦ 「自殺しない」約束をする
自分自身の間題ではなく他人の自殺の危険について相談に来た場合に、しばしば「本人は専門家に相談する気持ちはないと言っている」とか、「他の誰にも言わないで欲しい」と口止めされる場合がある。こうした場合には当事者本人の意思やプライバシーを十分尊重しながら代理人として来た相談者の話を丁寧に聴く。その上で、できるだけ本人が自ら相談に来るようにアドバイスするが、実際にはすぐには展開が見られず、代理人としての相談者に数回以上会い統けることで、自殺の危険がある本人との関りを保つ方法を取らざるを得ない場合もある。また危機介入のタイミングとして「実際に本人が自殺の準備をしている」「軽いが自殺未遂をした」「失踪し行方不明になった」あるいは「代理人が相談者としての限界を感じている」などには、家族や職場上司に速やかに連絡を取るべきである。