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釜石医師会報

No.289 平成22年4月号

遠野市青笹 喜清院の枝垂れ桜

他の地方から東北へ来てみると、春の東北では枝垂れ桜が多いにの驚く。集落から離れた民家の庭先にも普通に咲いているのが見られる。他の地域では染井吉野がほとんどで枝垂れ桜はむしろ珍しい。甲子町正福寺の本寺になる遠野市青笹の曹洞宗喜清院では樹齢約300年になる市指定の天然記念物である見事な枝垂れ桜が見られる。訪れる人もなく、ゆっくりと美しい花を堪能できる。

小笠原 和法

巻頭言

子ども手当は本当に子供に役立つのか?
岩井小児科医院 岩井 利男

 鳩山由紀夫首相が「命を守る」ということを何度も強調し、「チルドレンファースト」の方針を掲げて以来、政策立案として月額2万6000円を支給し、必要な経費は全額国庫負担とする法案を可決しました。また直島政調会長は「自民党政権下での、労働力や年金の担い手確保のための少子化対策という視点ではなく、子どもたち一人ひとりの視点に立って、お子さんが安心して育つことが出来る社会を実現してゆきたいと基本的な考えに立っている」と語りました。平成23年度一人当たり2万6000円。年31万2千円、総額5兆3千億円の巨額になることが予測されております。早速これに便乗して、「子育てサポーター応援団」なるものも現れてまいりました。羊頭狗肉でないことを祈るのみです。

 翻って、日本の子供の現状を政治家や官僚はどれだけ認識しているのでしょう。小児科学会の少子化対策委員会から提言がでております。有名な数字ですのでご存じの方もおありでしょうが…

・子どもの貧困率はOECD30ヶ国中 19位
・ひとり親家庭 30位
・日本の子供7人に一人が貧困
・日本の子どもの17人に一人が母子家庭
・毎週2.5人の子どもたちが虐待死
・2007年ユニセフによる幸福度調査では、自分が孤独と感じている15歳児は日本では29.8%
 (他の国は5~10%、最下位のオランダは3%)

と日本の子どもたちに関する数字は決して明るいものはありません。

 親から12億4千万円も貰っていながら、知らなかったという宇宙人や、政党助成金125億も懐にし、沖縄の別荘地取得や、自宅の「深沢銀行」に金を隠す名幹事長の言うことに、国民は唯々諾々として従うものなのでしょうか?

 この子ども手当にしても、離婚率が3組に1組と増加している現況の日本では、果たして子どもに全額正当に使用されるものなのでしょうか?ゴミ箱にわが子を捨てる世の中ですので、馬券、飲み代、パチンコ代などに流出していく危惧が多いと思います。経済金融界は支給総額のおよそ6~7割は貯金に回り、残りが消費されてもGDPの0.2%しか押し上げる力がないと予測しております。

 そこで私は親に支給する前に感染予防と重症化を防ぐための種々のワクチンの接種に使用すべきと思います。アジアで最も貧弱な予防衛生行政の日本で高価で接種者の少ない、Hibワクチン、水痘ワクチンの2回接種、肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチン、日本脳炎ワクチン、おたふくかぜワクチン、不活化ポリオワクチン、A、B型肝炎ワクチン、インフルエンザワクチンなどです。すでにシンガポール、韓国などでは実施中です。本当に子どもを大切にする国であるならば、Hibワクチンは即実行あるのみです。

 Hib髄膜炎では年間5%(600人)が死亡、25%が後遺症を残して苦しんでおります。また子宮頸がんは10万人当たり35人発病しております。更に高齢者への死亡予防のためにも肺炎球菌ワクチンの効果が認められております。藤沢町立病院で全国に先駆けして公費助成で開始されましたが、これは素晴らしいことです。

 子ども手当から給食費を天引きしろとの意見はありますが、予防接種に仕分けすることは、これら感染症で将来発病増加する懸念の医療費削減の大きな一助となることは確実です。給食費どころでは無い筈です。

 それこそ鳩山首相のいう「友愛の証」なのではないでしょうか。

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