背景色
文字サイズ標準

釜石医師会報

No.318 平成27年6月号

ワット・アルン

ワット・アルンは、タイのバンコクにある寺院。アルンは暁の意味である。三島由紀夫の小説『暁の寺』の舞台ともなり、チャオプラヤ川の川沿いにたたずむ姿はバンコクを代表する風景にも数えられている。この寺院で最も特徴的なトウモロコシのような形をした大仏塔はバンコク様式で、高さは75m、台座の周囲は234m。塔の表面は陶器の破片で飾られ、さらに基壇の部分にはラーマキエン物語に登場する鬼やガルーダ、ハヌマーンが飾り付けられている。塔の中程まで階段で登ることができるが後半は非常に急な傾斜でロープにつかまりながらなんとか登った。

小笠原 善郎

巻頭言

サルコペニア肥満
岩手県立大槌病院  黒田 継久

最近、糖尿病患者さんを診察していて、60才代なのに腹直筋が脂肪に置き換わっている患者さんがいることに気づきました。そこで、腹部CT検査を見直してみると、腹直筋が一部脂肪に置き換わっていたり、腹直筋・内腹斜筋・外腹斜筋・広背筋が薄かったり、脊柱起立筋(腸腰筋、最長筋、棘筋)が萎縮している方が多いことに驚きました。大臀筋・中臀筋・小臀筋も萎縮し、脂肪が入り込んでいます。そのような方々は、内臓脂肪だけで無く、皮下脂肪の多いようです。また、握力が低下していることも多く、50才代で、ペットボトルのふたが開けられないという方もいました。

サルコペニア肥満という病態が、最近、話題になっています。サルコペニアはギリシア語で骨格筋の減少を意味し、サルコ(筋肉)とペニア(減少)の造語です。そこに、過食・運動不足が加わると、余った栄養分が脂肪としてたまります。サルコペニアに肥満が加わると通常の肥満よりも高血圧などの生活習慣病などにかかりやすく、また運動能力、特に歩行能力を低下させるため、寝たきりになるリスクを高めます。

サルコペニア肥満は高齢者に多い症状と言われ、ある教授の調査によれば、男女とも60才代でサルコペニア肥満が増え始め、70才代以上になると約3割が該当したそうです。また、女性に多いと言われています。

しかし、80才の女性で歩くことがやっとの方を見た際、腹直筋自体は厚いのだが、多くが脂肪に置き換わっている状態でした。娘さんが言うには、昔は働き者だったそうです。40・50才でもこの方のように腹直筋が厚い方は、まだ見かけません。このことは、今の40・50才は、基本的に初めから筋肉量が少ない状態であろうことを想像させます。したがって、早期にサルコペニア→サルコペニア肥満になり、転倒・骨折→寝たきりとなる方が多くなるだろうと思われます。そこに、震災被災後の仮設生活での運動不足が、寝たきり患者さんの増加に拍車をかけると思われます。各地で復興整備が進んでいますが、公園は仮設住宅で埋まり、道路は大型トラックが行き交い、安心して散歩を楽しむことはまだまだ先です。家に閉じこもることが無く、自然に外を歩きたくなる街、みんなで運動を楽しめる街になることを願うばかりです。

(C) Kamaishi Medical Association All rights reserved.