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釜石医師会報

No.312 平成26年6月号

壊された溶鉱炉

1950年に富士製鉄と八幡製鉄との合併が検討され、公正取引委員会より、釜石の新幹線用のレール製作設備の日本鋼管への移設、2基の溶鉱炉の廃止が条件として浮上、1989年(平成元年)3月25日に高炉が廃棄されました。第10高炉は爆薬によって倒壊され市民の涙を誘いました。この絵は第8高炉解体途中のスケッチです。釜石のシンボルが消滅する一刻を記憶した過去帳の一頁です。

岩井 利男

巻頭言

新しい治療に対するかかりつけ医の役割
小笠原内科クリニック 小笠原善郎

 開業してもうすぐ13年になりますが、この間にも様々な疾患の新しい知見が発見されたり新しい治療法が開発されてきました。現時点で特に症状がなくても今治療をしておけば大事に至らずにすむ疾患がいくつかあります。その中で注目している疾患について少し述べてみたいと思います。

 胃癌の原因として最近話題のピロリ菌。昨年からピロリ感染の慢性胃炎も医療保険で検査、除菌治療ができるようになりました。ピロリ感染胃炎は無症状の人がほとんどですが、除菌することにより胃癌の予防効果が期待できます。特に若い人ほどその効果が高いと言われています。

 B型およびC型慢性肝炎はここ数年で検査や治療法の劇的な進展が見られています。高感度のウイルス量検査が可能になり、画期的な薬が続々登場しつつあります。今までは治療が難しく肝臓がんになる可能性のある患者さんを治せるようになるなど一昔前と考え方が大きく変わってきました。

 心房細動に対する治療法も変化してきました。心房細動を起こしても無症状の患者さんも多く放置すると重篤な脳梗塞を起こす危険性があります。アスピリンなどの抗血小板療法は心内血栓の予防効果が無いことが判明し、ワルファリンによる抗凝固療法が必要です。最近ワルファリンより副作用が少なく同等以上の効果を有し食事制限のない新しい抗凝固薬(NOAC)が登場しました。このような薬を積極的に使うことにより脳梗塞を予防することができます。

 リウマチ性心臓弁膜症はほとんど見かけなくなりましたが、最近増えてきたのは動脈硬化による大動脈弁狭窄症です。聴診器で心雑音を聴取するだけで簡単に見つけられます。心不全を起こす前に治療することにより心臓を長持ちさせることができます。

 このようにここ10数年の間にも新しい治療法が次から次へと開発されその情報についていくのはなかなか大変です。かかりつけ医として日々の診療の中で守備範囲を広げその治療法の適応となる患者さんをいかに見つけることができるかが大事だと考えています。

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